少し遅いですが、ad:tech tokyoに参加してきたレポートをアップしようと思います。
10月27日〜28日に行われた、ad:tech東京2011に参加してきました。
すでにいろいろなメディアで速報があがっていますが、今年のアドテックは目新しい視点というよりもこれまで語られていたことの再整理と共有、ということが多かったように思います。
その中でも、2日間のセッションを通じて繰り返し発言されていたいくつかのキーワードが抽出できたと思っています。
基本となるのは、「全体視点」という考え方ですが、そこにひもづくいくつかの視点があるのかな、と思います。
・「統合」から「全体視点」:「データ」「コンテキスト」で考えるマーケティング
・KPIドリブンな視点から、ROIの重要性への言及へ
・「認識」を変える存在から「現実」を変える存在へ
・震災後「つながり」を求める社会背景がエモーショナルなクリエイティブを求めている
・組織論への言及と人材資源に対する懸念
「統合」から「全体視点」:「データ」「コンテキスト」で考えるマーケティング
昨年のad:techでは「ソーシャルメディア」など特定のメディアをピックアップしたセッションが多かった印象で、トリプルメディア論も単語が先行していた印象がありました。
ことしは、それを俯瞰した上で「全体視点」が必要という流れに落ちていたのかな、と思います。
プレイベントの26日のソーシャルCRMのセッションでは、ネスレの揖斐さんが「ソーシャルメディアも企業が運営しているのであれば、コントローラブルなオウンドメディアである」という話もあり、実際企業が展開して行く際の軸になるのはやはりオウンドメディアである、ということを前提にメディアや自社プラットフォームの活用を中心として考えていく、という流れが現実的なのかもしれないと感じました。
アーンドメディア的な「評判」を連鎖していく仕組みに関しては、やはり「アイデア」が重要であり、その部分で「エモーショナル」というキーワードも多く見られたのが特徴的だったと思います。
エージェンシーにはよりレリバントなコンテンツをプランニングする能力が求められる一方で、プラットフォームは企業でコントロールできることが全体視点でマーケティングをとらえるための一つの鍵になるのではないかと感じました。
データという部分では、特にアイスタイル高松氏の発表にもあった、One Platform Multi Useという考え方に見られるように、データを一元で管理してより精度の高い顧客データをマーケティングソースとして他メディア展開するという考えかたや、日本ロレアルの事例でも見られるデジタルトリプルメディア、それ以外を統合してトラッキングしようとする取り組みはまさにこれまでデジタルマーケティングの業界で語られてきたことを総括して、先に進む考え方だと思われます。
また、データを押さえるためにはユーザの文脈(コンテキスト)を考えることが不可欠で、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスやRFIDなどのテクノロジーをどこでどう使うか、という全体的な設計が重要になってきます。
どこで、どうユーザがメディアに接触して何のデータが得られるのか、という全体的な視点で戦略を設計していくことがこれからのエージェンシーやマーケッターに求めれる視点なのでは、と思います。
もちろんデータは絶えずたまっていくので、「ビッグデータ」の活用や、処理方法についても検討が必要になってきます。
そこで、クラウドの活用が考えられリクルートなどでは、SUUMOの事例においてコンテンツ配信のサーバとデータ処理のサーバをオンプレミスとクラウドでそれぞれ分けた構成を発表していました。
クラウド側では、ユーザの行動傾向や履歴の膨大なデータを処理し、クロスセルのレコメンデーションエンジンなどのアルゴリズム部分、あるいは解析用に使用しているとのことでした。
ここで考えなければならないのは、データを持っていることもコンテンツをもっていることも資産にはならない時代になっていることだと思います。
データから得られる消費行動の傾向や、コンテンツとデータをひもづけてみられる状況などの、「知見」が資産になっていく時代になっており、エモーショナルなコンテンツもこういった中で抽出された視点からプランニングされるべきなのではないかと考えました。
KPIドリブンな視点から、ROIの重要性への言及へ
全体視点とからめて、展開するメディアやコンテキストが複雑になればなるほどKPIの設定も難しくなることはさることながら、ROIのトラッキングも重要になってくるという意見も多数見られました。
たとえば、日本マクドナルドの宇井さんが行っていたように、スマートフォン対応を進めなければいけない一方でそれの投資対効果がどのくらいなのか、ということを経営層に説明で切れ化ければならない、ということも大きな課題になっている現状があります。
定量的、定性的に全部の施策を俯瞰で設計することと同時に、それをどのような指標で成果をはかっていくのかが重要になってくるという発言が目立ちました。
日本ロレアルでは、Objective Breakdownというマトリックスを用いてKPIとメディアの関連性を細かく精査しているものの、ROIをレビューするときには細かく情報を取りきれておらずに苦労するポイントだと発言していました。
ビジネス戦略上の目標や目的(KGI)と、それを進めていく上での指標(KPI)、展開している施策やメディア、チャネルを総合的に俯瞰してみられるマップなのか、共有できるツールをもってメンバー間での意識統一ができるようにするべきだと同時に、クロスチャネル/マルチチャネルな戦略の場合に、どれだけ継ぎ目なくROIトラッキングができる仕組みを考える必要があることを感じました。
「認識」を変える存在から「現実」を変える存在へ
レイザーフィッシュのクラーク・コキッチは、従来のエージェンシービジネスからは脱却すべきだと言うキーノートスピーチを行っており、これは今後のエージェンシーのビジネスやクライアントとのリレーションシップを考えていく上で非常に重要な示唆をもたらしたものだと考えます。
クラークは、
“ビッグアイデア”の再定義
“チャンネルアップ”から“アイデアダウン”へのプロセスの逆転
“コラボレイティブ・クリエイティビティ”(協調型の創造性)の習得
という3つのポイントを挙げて、「ビッグアイデア」とは従来のような飛び道具的なものではなく、もっと深いユーザ体験やインサイトへ迫るべきものであるものだと説いた上でEpic Mixの事例とNikeの事例を紹介しました。
ユーザの「認識」を得るためのビッグアイデアではなく、体験そのものを技術とアイデアとタッチポイントで全く新しくデザインするという視点が必要だ、と説明しました。
その視点からのアイデアダウンの視点が必要だいう話をしていました。
また、アイデアダウンでビックアイデアを実現するにはコラボレーションが必要不可欠であり、クライアントとエージェンシーが高いモチベーションとクリエイティビティを持って協業する視点が必要だ、と語りました。
最後に「more fun」を協調しているあたり、アイデアとコンテンツに対する重要性を語っているのかな、と感じました。
震災後「つながり」を求める社会背景がエモーショナルなクリエイティブを求めている
クラークのキーノートと関連しますが、震災以降「エモーショナル」な表現が社会には受け入れられる傾向が強いと思います。
感動的、楽しい、使いやすい、便利、人々の感情の動きにフォーカスして、ポジティブな態度変容がやっぱり企業と顧客の感情的な絆を生むという風潮になってきていると感じます。
バスキュールの朴さんはSpace Balloon Projectの事例をひもとき、そこから現状のクリエイティブにおけるキーワードを「応援」としました。
一つの応援対象をみんなで応援することで気持ちがひとつになる、それによる安心感を醸成すると語りました。
カヤックのGoogle Placeの事例でも、オンライン/オフラインを駆使してgoogleを通じて、被災地を勇気づける体験や技術によって、体験が革新されていく様子を説明しました。
また、IntelはMusium of Meや韓国での少女時代との事例を通じて、「誰かにすすめたくなるような体験があるコンテンツは化ける」という経験則をかたり、感性的なコンテンツが人々によって指示されて、それがブランドの認知にもつながっていくことを語りました。
人々が、ポジティブな印象をもつには感情的なゆさぶりがもっと必要になっているということは、マーケティングとは一心同体のようなもので、データや文脈で考える戦略レイヤーとこうしたコンテンツレイヤーが密接に関わっていかなければならないことを示していたと思います。
これは、クロージングキーノートのFacebookでのセッションからも感じられることでした。Facebookはコミュニケーションプラットフォームからタイムラインなどを通じて人生をデザインするプラットフォームへと変革しようとしているようにも見え、「人生をつながりによってよりよいものにする」というコンセプトを伝えているのが印象的でした。
組織論への言及と人材資源に対する懸念
広告主にとってのエージェンシーの存在や、全体視点マーケティングを実行する上で、ということで言及されていたのが「組織と人材」の関係です。
前者は、マーケティングは従来、マーケティングの部署がプロジェクト的に単発で行っていた経緯があり、全体論になったときに社内の部署を巻き込みきれない現状があるという課題に言及しながら、CMOとCIOの重要について言及していました。
マーケティングをトップダウンで統括するCMOの存在、あるいはクラークコキッチはCEOのアジェンダの中にマーケティングを組み込むべき、としたトップダウンでマーケティングを統括できる機能が求められる一方、マーケティングとシステムはもはや不可分であり、そういういみではマーケティング部署と情報システム部署の連携の必要性や、CMOやCIOの必要性という話に結論づけていました。
人材の視点においては、「名物営業の不在」論から始まり、全体視点とからめて視点の広いプロデューサーやプロデュース能力の不足が広告主側から声としてあがりました。
昨年あたりから、ソーシャルCRMやソーシャルメディアマーケティングなんていうはやり言葉も出だしていますが、そこでも結論として言われるのはいつも組織論と人材論です。
特に印象的だったのは、資生堂 石川さんの言葉です。
「ブランドは地層のようなものである。ブランドの10年前はどうだったか、今はどうなのか、10年後はどうなるのか、という視点が重要。今ばかりに議論が向いているのではなく、地層の視点を持てるプロデューサーが必要になっている」
ブランドだけではなく、クライアントの状況やビジネス、業界の商習慣までを含めて理解してほしい、というのはデジタルエージェンシーにとって一番足りていない視点であり、必要不可欠な視点だと考えました。
デジタルの世界だけで完結することはない、ということをもっと我々は気づくべきだし、気づいている人はそれをもっと伝えていくべきだ、と感じました。
企業単位、あるいは業界単位で人材をどう育成していくか、ということを考えなければいけない時期なのかもしれない、ということが暗に語られていたと思います。
総括
語られている内容は確かに去年と比べても、それほど代わり映えのないものだったように思います。
ただ、自分の専門分野のIA/UXなどの潮流と、今年の全体視点を強調した潮流が割と一致する部分も多かったり、クリエイターのセッションでもマーケティングで語られているような「ユーザ体験の文脈を押さえる」という話は多く出ていて、クリエイター/マーケッター/IA/UXデザインなどで別個に語られている内容は、皆行き着くところは似ているのかもしれない、と感じました。
クラーク・コキッチが述べたようなコラボレーションモデルでのクライアントとエージェンシーの協業モデルを実現していくためにも、エージェンシーサイドはデジタルやマーケティング、デバイスに対するもっと広い視点をもって戦略を描けるようになる必要があるし、そこにクライアントのビジネスというものを関連づけて考えられる能力がよりいっそう必要になってくると感じます。
そのためには、新規クライアントの場合にはクライアントのビジネスを体験する勉強会などを行うなど、デジタル以外の場でクライアントのビジネスがどう動いているのかを知り、それをデジタルを含めたマーケティング戦略にブレイクダウンしていく視点が必要になってくると感じました。
「仕事」が変われば、報酬も組織も変わる。
クラークのこの提言のとおり、スピーディな判断やフレキシブルな対応ができない組織はどんどん取り残されていくと感じます。
Webやデジタルメディアを扱うことはもはや 一昔前のような「トライアル」から、「実践」のステージに移行しており、広告主はデジタルを活用して企業のビジネスを推進しようとしているという事情をよく理解した上で、そのビジネスの成功のためにはどのようなプランが最適なのかを考える必要があると思うし、ある種失敗を恐れずに実践していく姿勢が必要なのではないかと感じました。
その意味で、エージェンシーの感じる危機感と広告主からのプレッシャーというものを強く感じた二日間でした。
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